音楽って正直もう飽和してるじゃないですか。
なんたって時は2018年、平成もまもなく終わる。音楽っていう文化がいつの時代からあったのかわからないけど、太古の昔から音で楽しむ遊びはどうせあったに違いないし、そこからいったい何百年、何千年の年月が費やされたのかはさておき、ひとつのカルチャーにかけた時間としてはもう優勝でいい。
物語なら引き延ばしに引き延ばしを重ねた上に本筋の展開が終わったあと後日談を延々とやってるようなもので、もう真新しい展開にはあまり期待できない。新しいことをやろうとしてもどっかでみたパターンの焼き直しになってしまう。
そんな中、新しいことをしよう、変わったことをしようともがくバンドマンは腐るほどいて、「僕らにはこんな個性があります!」「唯一無二の武器もってます!」と謳う彼らもどっかで聴いたような音楽をやってたりする。
それ自体は全然悪いことではなくて、むしろこの時代に新しいことを模索していろいろ挑戦する姿勢はぐっとくるし、実際に(少なくとも自分は)聴いたことのない音楽をやって個性を確立しているバンドもいたりして、感動することだってある。
ただ、個性を追い求めることが正義かと言われると、違うと思う。
特に最近は、歌詞やライブパフォーマンス、あるいはMV、ときにはTwitterで、「個性を出さなきゃ」という業を背負ったバンドマンたちがスベりたおしている姿をよくみる。いや、スベっているだけならまだいい。なんなら音楽がかっこいいバンドマンのTwitterがおもしろくないのはむしろ好感がもてる。
そういうことではなくて、「個性を出さなきゃ」という狙いが透けてみえるのが嫌だっていう話。
そこまでして個性を出さないと生きていけない厳しい世界であることは理解しているつもりだけど、最近は個性を出そうとすることで没個性に陥るジレンマをよくみる。
だったら。そうなるくらいならば。
たとえどっかで聴いたことあるようなメロディだろうと、ありきたりな歌詞だろうと、自分が良いと感じるメロディと嘘のない歌詞を絞り出して唄ってくれよと。そこに特別な何かを見いだすのはこっちがやるからと。
そう思ってしまう今日この頃なんです。
個人的にそれをやってくれてるなと感じるバンドがいて、そのバンドを紹介したくてこの記事を書いてるんですよ。つまりここからが本題。前置き長いよと思われたかもしれないですけど、なんなら前置きの方が長いまである。
ではこちら。
PARKLIFEというバンド。
「伝わって」っていう曲です。
バンド名も曲名も、なんなら曲調も声も歌詞も、一見して個性が溢れているわけではない。ビジュアルも失礼を承知でいうと普通。普通のスリーピースバンド。
でも、このくらいシンプルでいいなって思うんです、音楽。
もしかしたらいま初めて聴いてみて、「まあ悪くはないけど、ふつうだな」って感じた人もいると思います。正直なことをいうと、僕も初めはそう思いました。
僕の場合は最初に貼ったMVじゃなくて、今年の3月に発売されたこの「証鳴」っていう、彼らの全国流通版のCDをジャケ買いして聴いたのが出会いだったんですけど、一周目聴いたときはやっぱり「悪くはないけどふつうだな」って感想で。
でも、不思議とそこで聴くのをやめようという気にならなくて、延々と聴き込むわけでもなく、他の新譜やらと一緒に流し聴いてることしばらく。
あれ、めちゃめちゃいいなと。しかもどういうわけだかなぜか飽きない。翌月、翌々月の新譜を聴いてる頃になっても、飽きずに聴き続けていることに気づいたときには自分にとって唯一無二のバンドになってたんです。
ずっと聴いていられる理由として、シンプルにメロディがめちゃくちゃいいんですよね。
唄い方や曲のアレンジも無理に個性を出すこともない。
歌詞も癖が少ない抽象的なフレーズが多くて、メロディの邪魔にならない。
最近は特に、ブラジャーのホックを外すときだけ心の中までわかったりするようなことを言いたい欲が透けてみえるバンドが多くて、もちろん具体的な歌詞の方がより強い共感を引き出せたりするのはわかるんですけど、「パワーワードを産み出そう」みたいな色気がせっかくのメロディを台無しにしちゃうパターンもたくさん見かける今日この頃、こういう引き算的に良さを出すバンド、すごくいいなって思うんです。
そんでやっぱりそういう音楽って、飽きたり胸焼けしたりすることなく、聴き続けられるんですよね。
このPARKLIFEの「証鳴」ってアルバムは、ほんとにずっと聴いていられる名盤だと思います。僕は2曲目の「カノン」と4曲目の「Heartfelt」っていう曲がほんとに大好きで、みんなにも聴いてほしいなって思うんで、よかったらぜひ。
それでは。