いとの音楽ブログ

バンド紹介、ディスクレビューからセンチメンタルな独り言まで幅広く取り扱っております。どうぞごゆっくり。

秋山黄色がいつの間にか売れていた

 

    1年半くらい前、このブログを始めた頃だったと思うけど、秋山黄色という若手のシンガーソングライターについてこんなツイートをした。

 

 

「絶対売れる」とか強い言葉を使って絶賛したんだけど、せいぜい2年くらいすればYouTube再生回数100万回超えが数曲生まれるくらいだと思って言ってた。

    いや、100万回超えっていま軽々しく言ったけど、これめちゃめちゃすごい数字で、テレビに出てないインディーズバンドとかが一曲到達すれば十分バズったって言える数字だし、それを数曲って話だからこのときの僕からしてもかなりの期待を込めて「売れる」と言ってるのは間違えてない。

    だから、久しぶりに彼の曲の再生回数を見たとして、それがちょっとそこら辺の若手バンドより数字が大きかったとして、驚くこたあねえと、そう思ってたんですけどね…。

 


f:id:ito-rock:20200522182511j:image

 

 

    桁間違えてない?

 


https://youtu.be/FodIcZ6TLxg

 

    間違えてないですね。

    1000万回超えてるらしいですこれ。いつの間にそんな売れたんだよ秋山黄色。

 

    もちろん全然知らないって人もたくさんいるだろうから、軽く紹介します。

    秋山黄色。2017年頃から活動しているまだ二十代前半の男性シンガーソングライター。先ほどのモノローグという曲がドラマの主題歌に抜擢される等、いま爆発的な速度で売れてきている。2020年、いちばん勢いのある自称ニートなんですよ。

 


https://youtu.be/Bfjb__puttk

 


https://youtu.be/zCGl_APrE0Q

 

    こんなふうに、イントロからサビまで溢れんばかりのキャッチーさで耳をぶん殴って快楽ホルモンに溺れされて中毒症状に陥れるやり口の音楽バイオレンスを得意としているイメージだった。けれど、先のモノローグでずいぶん印象が変わった。なんていうか、こんなに「浸って聴きたくなる」曲を書くイメージじゃなかったんですよね。

   持ってる武器をそのまま生かしたまま、じっくり聴かせることもできる。ライブで跳ねたり拳を突き出したりがしやすい曲から、フェンスに肘をのせたり壁にもたれかかったりしながら聴ける曲まで、それも高いクオリティを維持したまま作ることができることを、この曲で、あるいは3月にリリースしたフルアルバムで証明してきた。そりゃ売れる。

 


https://youtu.be/UFFvLbUKyts

 

    秋山黄色の曲の中でもいちばん好きなのがこの「夕暮れに映して」っていう曲。紛れもなく名曲で、去年の夏頃に配信されて今回のフルアルバムにも収録されているのに、他の曲に比べていまいち再生回数が伸びていない。

    曲調が明るめなのにテーマや歌詞、MVの雰囲気とかがどことなく暗かったりアンニュイだったり切なかったりする曲大好き芸人の僕としても、この曲はもっと評価されてほしい、もっと多くの人に聴かれてほしいと願ってやまないのは当然なことで。だから今さら秋山黄色の記事書いたりしてるみたいなとこある。モノローグとかやさぐれカイドーとかだけじゃなくてこっちも聴いてくれ。

 

    そもそもこれ聴いて「曲調が明るい」と感じてしまう最大の理由はピアノにあると思う。入りとか間奏部分とかかなり軽快なリズムでくるから、流し聴いてるとうっかり明るい曲だと勘違いしてしまう。そこが罠。耳に残ってなんとなくリピートしたが最後。歌詞にはどこにも"陽"の成分が含まれてない。むしろこのギャップを作り出すためにピエロを買って出るピアノがやばい。目立ちたがり屋で浮いてるやつかと思ったら、実は憎たらしいほどに気遣いできるし良いやつ。漫画でもそういうキャラに心底弱いんだよこっちは。

 

    若手のインディーズバンドの中には、自分のバンドの楽器以外の音入れるのに抵抗あるのか、ストリングスとかピアノとか入れるのを嫌煙するタイプも多いけど(限られた音の中で試行錯誤するバンドは嫌いじゃないし、そういうこだわりあるバンドはむしろ好物というのはさておき)、秋山黄色は元々ソロでやってることもあってか、色んな楽器を入れることに対しても寛容な印象。幅の広い楽曲を作れる背景には、センスとか技術とか以前にこういうスタンス的な部分が大きいのかもしれない。

 

    そんなアレンジどうこうの話よりも、僕がこの曲で真に恐ろしいと思ってるのがBメロ。邦楽歌謡曲では落とすのが一般的なBメロが、なんならいちばん耳にこびりつく。ここをサビに別の曲にしてもいけちゃうくらいの良メロを引き立て役に使う贅沢っぷり。というかMVで曲名出すタイミング的にこっちがサビだったりするのか…?いや、その上で押し負けることない最強サビが続いてるのも贅沢に拍車をかけてる。寿司と海鮮丼どっちも食べてる気分になるんだけどいいの?

 

 

    そんな秋山黄色の変態性が垣間見える「夕暮れに映して」はじめ、個性とセンスが爆発した楽曲が盛りだくさんのファーストフルアルバム「From DROPOUT」、ぜひ聴いてみてください。

 

    では。

 

 

From DROPOUT (通常盤) (特典なし)

From DROPOUT (通常盤) (特典なし)

  • アーティスト:秋山黄色
  • 発売日: 2020/03/04
  • メディア: CD