日々の暮らしの中で必要とされてる音楽とはなんなのか。
そんなことを考えたとき、「とびきりハッピーな音楽!」と答える人はきっと多くない。当然、そんな曲を聴きたくなる気分のときもあるだろうけど、毎日のように聴いていたら少し鬱陶しくなってしまうかもしれない。現実の日々とあまりにかけ離れているからだ。
毎日がハッピーであればそれほど素晴らしいことはないけれど、なかなか人生そう上手くいくようなもんでもない。
「毎日がハッピーかどうかなんて考え方しだいだ!」と数多の自己啓発書がまくし立ててきそうだけど、読書によって自己を啓発できる猛者は少ないのか、現状、日々を憂う声の方が多数派だ。そもそもそんな猛者は音楽なんかに頼らない。
とすれば必要とされてるのは、とびきり悲しみに暮れた音楽だろうか。
いや、それに共感できるほどの悲劇的な日々を送っている人もきっと多くない。
もちろん、誰しも不運な出来事で立ち直れないほどの悲しみに暮れることはあると思うけど、決して日常ではない。あってほしくない。そもそもそんな大きな悲しみの中で必要とされるのは音楽であってほしくもない。うっかり音楽に救われることはあっても、救いを求めるのは周りにいる誰かの方がいい。
つまり、日常の中で必要とされてる音楽っていうのは、「学校で友だちとギクシャクしてる」とか、「仕事でミスばかりしてる」とか、「好きなひとにふられてしばらく経ったけどまだ若干引きずってる」とか、そういう日々の暮らしの中に潜む悲しみや憂い、苛立ちに寄り添うような音楽なのかなと。
では、そんな"暮らしの中の悲しみに寄り添う音楽"とは何か。
ヨイズといいます。どうですか。寄り添ってくれそうでしょ。
ヨイズの鳴らす音楽は、暮らしの中で抱く負の感情に対する万能薬になりうる。
特に、6月26日にリリースされたこの「悲しみにも花束を」という曲には、悲しみに、憂いに効く成分がふんだんに盛り込まれている。めちゃめちゃ効く。
ただ、ちょっと沁みる。人によっては副作用で胸が締め付けられたり、古傷が痛んだりすることもあるかもしれない。それでもちょっと我慢して聴いてみてほしい。
この曲がどうしてそんなに効くのかというと、患部に直に塗ることができるからなんですよね。
「ちょっとなに言ってるかわかんない」って顔やめて。
とりあえずサビの歌詞をどうぞ。
拭いきれない悲しみの対価を抱き寄せては
幸せはたまに僕を殴った
まかり通らない暮らしの日々に
何度も花束を
僕を殴るのは"幸せ"なの、真理すぎて辛すぎませんか。
どんなに悲しいことがあっても、その重みを実感するためには比較対象としての幸せが必要で、それは過去の幸せだったり、自分以外の誰かの幸せだったり、悲しみと併存しうる今の幸せだったり、いろいろな形があるかもしれない。なんにせよ"悲しみ"がそれ単体で殴ってくるわけではない。そんな残酷な真実が唐突に告げられる。
こんなふうに、この曲を聴く人の痛みのもとにヨイズは直に触れてくる。
その上で、「まかり通らない暮らしの日々に何度も花束を」与えてくれる。その人の傷や痛みの輪郭を丁寧に捉え、溢れるほどの"優しさ"を患部にたっぷりと塗り込んでくれるわけだ。こんなにも愛に満ちた、"悲しみ"に効く歌があるだろうか。
もちろん歌詞が良いだけの曲じゃない。
佐藤リョウスケ(Vo.Gt)のハイトーンながらも地に足ついた力強い声が、一発で耳を掴んで離さない圧倒的なグッドメロディが、歌を引き立てながらもしっかり主張するギターが、この曲の魅力を何段階も引き上げている。
このヨイズというバンドは、ex.赤色のグリッターのフロントマンであった佐藤リョウスケのソロプロジェクト「YOl'S」を前身として、「良いメンバーと、良いバンドで、良い音楽を」を信念に、2019年に結成。デビュー曲となるこの「ともしび」という曲で、確かな演奏技術と表現力を土台とした実力派バンドとしてその存在感を示した。
「ともしび」も、何かを諦めてしまったり、人を信じることに疲れてしまったりした人の心に愚直に語りかけるような"不器用な優しさ"に溢れた、胸が締め付けられる一曲。ぜひ服用してほしい。
そして2ndシングル「アンドロイド/サイレン」収録の「アンドロイド」も、また異なった効用を持つ。
また人が死んだ車内は 舌打ちとため息で
「かわいそうだ」そんなお前は心が死んでいる
はっとするような歌い出しから始まるこの曲は、世の中に対する苛立ちや無力感を抱くすべての人に刺さる劇薬みたいな一曲。
攻撃的なロックサウンドに浸るように聴きながら「あいつに聴かせてやりたい」なんてことを考えていると、ふと「これは自分が聴くべき曲だったんだ」と気づく瞬間がある。
「アンドロイド」はこれを歌うヨイズ自身のための曲であり、これを聴く僕らのための曲でもある。誹謗中傷に溢れギスギスしたこんな世の中だからこそ、たくさんの人の耳に届いてほしい。
今回紹介した曲以外にも、日々の暮らしの中で抱くあらゆる感情に効きそうな音楽をヨイズはたくさん生み出しているし、これからもどんどんつくり続けていくに違いない。
一方で、ヨイズの音楽じゃないと満たされない心の隙間を持っている人は、もっともっとたくさんいるはず。
ヨイズがそんな人たちにとっての万能薬となる日がくればいいなと思います。
では。