高校生くらいの頃聴いてすごく好きだったCDって、何年経とうと色褪せないなあ、と思うんですよ。
なんだよ突然、と思われるかもしれないですが、とりあえず聞いてほしい。
このブログを読んでくれている年齢層はさっぱりわからないけど、ある程度大人になると、その中で音楽の好みもどんどん変わっていって、バンドの側も方向性を変えたりして、「3年前には良さがわからなかったけど、最近すごくハマってる」とか、「この音楽、5年前に出会ってたらすごく好きだったろうな」とか、あると思うんですよ。
そりゃ歳とるうちに考え方にも変化があって、こと感性と密接な関係にある音楽の好みに変化があるのも、その時々の自分によって響く音楽が違うのも、当然ですよね。
とはいえ。
高校生くらいの、思春期真っ盛りの頃に馬鹿みたいに聴いた音楽だけは、いつ聴いても最高じゃないですか。
高校生の頃だから全然お金が無くて、レンタルCDから音源をウォークマンに取り込んでたけど、ウォークマン買い替えたときにいま使っているPCに音源が残ってなくて、「最近あんまり聴いてなかったしわざわざ入れ直さなくてもいいかな」って疎遠になっちゃった懐かしい音楽と、TSUTAYAの棚を物色してるときに偶然出会って唐突にまた聴きたくなるあの衝動とか。
このブログでもそういう話がしたくて、その頃はまっていたディスクを聴き直してレビュー、というか、良さを改めて確認しよう、みたいなことを、シリーズ連載的にやっていきたいなあってふと思ったんですよ。
まあ、ありていに言うと旧譜のディスクレビューです。
その記念すべき第一弾に僕が選んだのがこちら。

- アーティスト: andymori
- 出版社/メーカー: Youth Records
- 発売日: 2010/02/03
- メディア: CD
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andymoriの「ファンファーレと熱狂」
ド名盤です。
たぶん同じ世代のロック好きには知らない人ほとんどいないんじゃないかなと。
2010年リリースということで、8年前。
自分がまだバリバリの高校生のときのアルバムです。あんまり覚えてないけど、当時周りにandymoriのこと話せる友達はいなかったと思う。
でも大学へ進学してからandymoriをよく聴いてたっていう友達にはたくさん出会えたから、たぶん当時から人気だったんだと思う。高校生の僕に友達がいなかっただけの可能性がいちばん高い。かなしい。
とはいっても、andymori、2014年に解散してしまっていて、いまの高校生とかにはあまり馴染みがないかもしれない。
現在もandymoriの初期メンバーとシンガーソングライターの長澤知之でALっていうバンドやってたりするけど、当時のandymoriほど若者に浸透している様子は感じられない。
でも、andymoriから影響を受けていたり、同じようなルーツを感じる(音楽自体が似ているという意味ではない)SUNNY CAR WASHやtetoのようなバンドが人気を集めていることからも、今の高校生にandymoriが響かないはずはないんじゃないか、と思ってみたり。知らないだけで。
というわけでandymoriを振り返ることで、昔聴いていた20代の人にあのドキドキを思い出してもらったり、この記事を読んだ10代にちょっと聴いてみてもらえたりしたら嬉しいなあと思うんです。
そんなandymoriの2ndアルバム「ファンファーレと熱狂」。
このアルバムは全体を通して"どこかへいきたい衝動"と"どこへもいけない無力感"がうまく表現されていて、それが特によく現れているのがこの曲。
「完成形を目指して 夜も飛ぶ鳥 ミサイルも魔女も越えてあの街まで行け
CITY LIGHTS CITY LIGHTS どこにも行けないけれど」
この衝動と無力感をポップに歌い上げる感性に僕は確実に虜にされました。
そんな無力感を包み込むように唄われる「16」はすごく優しい唄で。
「どこにも行けない彼女たち 駅の改札を出たり入ったり
変われない明日を許しながら なんとなく嘘をつくのさ」
「祈りを込めて歌うように 神様に会いにいくように
16のリズムで空をいく 明日もずっと空をいくのさ」
やっぱりどこにも行けないんですよね。
でもどこかに行こうとしてる。
でもそういう感覚って誰しも、特に10代の頃って皆が持ってると思うんですよね。
そういう衝動だったり無力感だったりに寄り添ってくれる唄があることに救われた人も多いのではないでしょうか。
かといってandymoriのフロントマンである小山田壮平が普遍的な感覚しか持たない凡人かと言われると全くそうではなくて。
曲の節々に世界の見え方がたぶん違うんだろうなっていう歌詞が見え隠れしている。
たとえば。
「地面には五匹の生き物がいる 一匹は天使 一匹は人間 一匹は悪魔 一匹は豚 そしてカボチャのお化け」ー グロリアス軽トラ
うん、わからん。
あとは。
「ジェットコースター止めてよ 速いのは苦手なんだ許してよ」ー クレイジークレイマー
乗るなって。速いから。
いや、わかりますけど比喩だって。でもどんな世界の見え方してるんだろうこの人、って気持ちにはなってしまうんですよね。
そんな「クレイジークレイマー」はそれでもやっぱり名曲で。
「病名でもついたら 病名でもついたら
いじめられないし もう少しは楽なのかな」
っていう諦めにも似た優しさと。
「世界で一番お前が正しいんだよっておれが歌ってやる みんなの前で」
っていう少し強引な優しさが、一つの曲の中で、あんなにポップに唄われることがあっていいのかと。
やっぱり小山田壮平のぶっとんだ、でも誰もが持つ普遍的な感覚をも表現した歌詞世界に、その確かなソングライティング力をまんべんなく発揮した楽曲は唯一無二のものばかりだと思います。
それがよくわかる2010年代初頭の大名盤「ファンファーレと熱狂」、皆さんも聴いてみてはいかがでしょうか。
では。