ヒトリエの新譜、皆さん聴きました?
めちゃめちゃよくないですか、HOWLS。
そもそもヒトリエって、それなりに売れてはいるものの、ちょっと実際とは異なる、とまでは言わないもののだいぶ偏ったイメージを持たれてしまい、そのせいかキャリアや実力のわりにはまだまだ売れてはいないなと。というかもっと売れてもいいんじゃないかとよく思うんですよ。
やっぱりボーカルのwowakaがボカロ界の超有名人だから、そっちのイメージに引っ張られてしまいがちで、とはいえヒトリエの曲に確かに存在するwowaka仕込みのボカロ感が、そのイメージを増長してしまっているところはあるのかなと。
もちろんそれは悪いことではなくて、聴いてて心地良いけどたしかに違和感の残るメロディラインはヒトリエをヒトリエ足らしめる要因であり、武器でもある。そこに、圧倒的な演奏技術からなる耳にこびりついて離れない強烈なリフを加えれば、「ヒトリエね、あのボカロをそのままバンドにしたやつでしょ」っていう人がもつイメージが出来上がるのではないでしょうか。
こんな具合に。うん、たしかにボカロをバンドにしたやつだ。ごめん。
一方。
昨今、バンドを聴いてるような人たちがよく口にする"エモい"。初期衝動全開の若手ギターロックバンドからメロコア、メタル、ベテランの歌ものバンドまで共通して使用できる褒め言葉である"エモい"、なんでもかんでも言われすぎですよね。驚きの汎用性。白シャツかよ。
そもそも"エモい"って、感情とか感動を意味するエモーションからきてて、「情緒がある」ってニュアンスのようだし、そりゃ音楽っていうものに使い勝手がいいのは至極当然だと思います。昔でいうところの「をかし」みたいなものでしょ、要するに。昔の人もジャンル問わず短歌やら随筆やらにすぐ「いとをかし~~~むり~~~」と言ってたんでしょどうせ。
しかしこの"エモい"、ヒトリエに使われてるとこをほとんどみたことない。ボカロの要素から機械的なイメージが強いせいだと思われる。「機械なんかにゃおれの情緒は刺激されねーぞなめんな」ってことだと思う、きっと。全然違ったらごめんなさい。
ただ、いま現在のヒトリエ、もしかしてちょっと"エモい"んじゃないの。っていうのが今日の記事です。
とりあえず新しいアルバム「HOWLS」から、ティザー映像の公開があった「SLEEPWALK」を聴いていただきたいなと。
どうですか。
ところどころ早口言葉みたいな言葉のつまり具合はたしかにwowakaのそれですが、強烈なリフでどついてくることもなく、機械的で歌詞が入ってきづらかった以前の曲に比べると、すっと歌詞が入ってくる。言葉に感情がのってる。これはちょっと、"エモい"の要素、あるのでは。
僕が思う"エモい"のパターンのひとつに、「夜ひとりで散歩しながら聴きたくなる」っていうのがある。まさにMVのwowakaのごとく、ポケットに手を突っ込みながら、少しだけ愁いを帯びた表情で、ちょっとかっこつけながら、歩く。あの、ふと我に帰ると気持ち悪くて恥ずかしいやつ。
思いきり感傷にひたるのって"エモい"なって思うんですよ。この「SLEEPWALK」はそれができるという意味で、"エモい"といえるのではないでしょうか。
つづいてこちら。
アニメのタイアップもあり、シングルとして先にリリースされた「ポラリス」。
"エモい"MVメソッドとして代表される、「電気のなさそうな広いところでギターかき鳴らしながら熱唱する」を実践している。これはエモい。
"エモい"のパターンのふたつめとして、「聴きながら拳をかかげたくなる」っていうのがあると思うんです。よくエモいって言われるバンドのライブではみんな拳をぎゅっと握ってライブハウスの天井ぶん殴ろうとしてるのよく見るし。届いてないぞ。なぜかやや斜め後方に拳が伸びて僕の頬が殴られたことあるのいまだに根に持ってるからな。
その点、この「ポラリス」めっちゃ拳かかげたくなりませんか。そう、"エモい"んです。だんだん雑になってきてるのは許してほしい。
最後にこちら。
シノダさんのギターが悲鳴をあげてらっしゃる。wowakaさんがここまで感情をむき出しに歌ってるのも珍しいかもしれない。
この「青」っていう曲聴いてわかってもらえるかもしれないですけど、ヒトリエ、速い曲だけじゃなくてバラードもいけちゃうんですよ。
僕調べの"エモい"パターンのみっつめに、「壁にもたれかかりながらうつ向きがちに聴きたくなる」っていう、たいそう気持ち悪いものがあるんですけど、これはまさにそのパターンですね。エモいんです。だんだん"エモい"がゲシュタルト崩壊してきませんか。僕はツイッターやらなんやらを見てるだけで触れる"エモい"の多さにあてられて、わりと日常的にゲシュタルト崩壊起こしてます。皆さんにもこの感覚をわけてあげたくて"エモい"を連呼してるとこある。一緒にわけわかんなくなりましょうね。
まあ実際のところ、"エモい"かどうかはどうでもよくて、今回のアルバム聴いてると、ヒトリエ、今までの良さを残しつつ、どんどん進化してるし、新譜も聴かずにイメージだけで知った気になるのはもったいないなと思わされたわけなので、とりあえずあなたの耳で聴いてみてから、あなただけのヒトリエの印象を決めてみてはいかがでしょうか。
それではこの辺で。