初期衝動。
インディーズのロックバンドが好きな人たち、みんな好きですよね、初期衝動。
なんなら小慣れて綺麗にまとまった完成度の高い音源をつまらないとすら思ってるところ、ありますよね。
だいたい、完成度が高くて洗練された楽曲が聴きたい人が、インディーズバンドを漁るのってちゃんちゃらおかしいじゃないですか。
金も知名度もないバイト浸けのバンドマンがどうにかこうにかつくったデモ音源よりも、プロの作詞家作曲家の手を借りて編曲されて、金をかけて一流のエンジニアとレコーディングした流行りのJ-POPの音源の方が、客観的にみて完成度が高いのは当たり前ですもん、そりゃ。
別にインディーズのシーンにそういう音楽がひとつもないとは言わないけど、その界隈に興味がある人が求めてるものって、たぶん凝った編曲とか完成度とか、そういうものではないんじゃないかなと。
で、どういうものを求めているかというと、ひとつ挙げるとすれば、そう、最初に言った初期衝動って話で。
ほとんど素人みたいな人たちが、あふれでる想いとむき出しの才能を勢いのまま楽曲に詰め込んだ結果、気づいたらなぜか出来上がってたような産物がすごく好きなんです。
それで、そういう初期衝動に楽器を持たせたようなイメージのバンドがいて。
そう、tetoです。
最近ずいぶん人気になって、知ってる人も多いとは思います。まさに破竹の勢いで売れてる。ライブのチケットがなかなかとれない。
この「高層ビルと人工衛星」って曲も、tetoの人気の火付け役となった初期曲のひとつで、(再録はされたものの、)まさに初期衝動が為せる技で、計算だけじゃとてもつくれない、そう思わされる楽曲。かっこよすぎるでしょいくらなんでも。
まあでも、初期衝動は初期衝動でしかないし、もう売れてきてから少し経って、リリースも重ねて、そろそろ小慣れてまとまった曲つくりだす頃なんじゃないの?それも悪くはないけどさ。
と思ってたんですが、この度、新譜が発売されまして。15曲入りの充実のフルアルバム。先の高層ビルと人工衛星はじめ、既に廃盤となった自主製作盤の再録も4曲収録。
ごめんなさい。僕が間違ってました。
めちゃがくちゃになって相も変わらず最高にかっこいいです、teto。
そして思ったのは、
「僕が初期衝動だと思ってたもの、実は初期衝動ではないのでは」
ってことで。
今回収録された新曲、例えばアルバムの1曲目を飾る「hadaka no osama」や4曲目の「奴隷の唄」、再録曲の「高層ビルと人工衛星」に比べても、これまで初期衝動だと思ってた奇跡みたいな塩梅の、耳障りの良いメロディと尖った歌詞と荒々しい演奏のバランスが全然損なわれてなくて、むしろパワーアップしてる。
後半の「溶けた銃口」とか、シングルとしてもリリースされた「忘れた」、アルバムのタイトルにもなってる「手」もそうだけど、しっかりと聴かせにかかってる曲にしても、teto特有の衝動的な部分とか、どんな感性持ってたら産み出せるのかわからない鋭い歌詞の威力は全く衰える気配がない。
これはもう、tetoというバンドが持つ性質とか武器そのものであって、初期だからって理由であふれ出していた程度の曖昧な何かに凄さを転嫁してたのはとても失礼なことだったと思わされました。
ということは。
これから先も、それこそ若手バンドの時期を越え、中堅バンドになろうと、大御所バンドになろうと、いま以上にかっこいいtetoを見られるんじゃないかって期待もできてしまうわけで、今からもう楽しみになってしまいますよね。
そんな未来への興奮すら感じられるtetoの新譜「手」、ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか。